2014年05月25日

群山紀行-唯一残る日本の寺-12

つづき

やがて、ギャラリーなどアート関連の建物が並ぶ路地の先に、東国寺があった。

群山紀行-唯一残る日本の寺-12

入口の石柱には 「昭和九年六月吉祥日」 と刻まれていたが、そのうち 「昭和」 という部分はつぶされていた(▼)。解放後につぶされたのだろう。

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この日は5月3日。釈迦生誕日(陰暦4月8日=今年は5月6日)に近かったので、境内にはたくさんの燃灯が吊るされていた。

群山紀行-唯一残る日本の寺-12

群山文化観光HPによると、

東国寺は群山市錦光(クムグァン)洞にある日本式寺院。植民地時代、韓国で建てられた日本式寺院は(解放後に)ほとんど取り壊されており、韓国に現存する唯一の日本式寺院だ。華やかな装飾が施されている韓国寺院とは違い、装飾のない大雄殿(本堂)・軒や、窓の多い外壁が日本式寺院の特徴を示している。大雄殿は2003年、登録文化財第64号に指定された。

東国寺は、日韓併合の1年前の1909年、鳥取県の曹洞宗僧侶・内田佛観という日本人僧侶によって開設された布教所が始まり。4年後の1913年 「錦江禅寺」 という名前の寺が創建された。当時、建材は全て日本から運びこんで建てたと言われている。

主な建物は大雄殿・僧侶が寝起きする 「寮舎」・鐘楼の3つ。1945年の解放後は新政府に移管され、1955年に全羅北道宗務院が買い取り、その後1970年にキム・ナムゴッ僧侶が寺の名を 「東国寺」 と変え、今日に至る。東国寺は大韓仏教曹渓宗第24教区本寺 「禅雲寺」 の末寺。大雄殿(▼)は、寮舎と廊下でつながっており、日本の江戸時代の建築様式で建てられている、とのこと。

群山紀行-唯一残る日本の寺-12

群山紀行-唯一残る日本の寺-12

本堂の内部にもたくさんの燃灯が(▼)。東国寺の本尊・釈迦三尊仏像は、文禄・慶長の役の頃のものだそう。全羅北道有形文化財第213号。

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本堂の一角では、「3・1節第95周年記念 東国寺 侵奪史料館 第3回企画展」 として 「苦々しい記憶、神社と無断統治 朝鮮明堂には神社があった」 という展示会が開かれていた(3/10~6/30)。企画展のタイトルにある 「明堂(ミョンダン)」 とは風水で非常によいとされる場所のこと。

植民地支配や戦争に関するありとあらゆる史料が展示してあった。東国寺の 「侵奪史料館」 には、東国寺所蔵の史料と、青森県・曹洞宗雲祥寺の一戸彰晃住職が朝鮮侵略に対する懺悔の意味を込めて寄贈した史料、合計約5,000点があり、今回の企画展ではその中の約300点が展示されているそうだ。

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韓国の人がこういうのを見ると、「日本=軍国主義」・「右傾化」 というイメージが一層強くなるんだろうなと。

ちょうど、文化解説士と思われる人が来場者(韓国人)に展示内容について説明していて、さすがに日本語で話せる雰囲気ではなかった。もっとも話したところで韓国人から何か言われたとは思わないが、雰囲気的にちょっと・・・。

本堂の一角では、白黒の古い記録映像が流れていてなかなか興味深かった。いつ頃の映像かよく分からなかったが、昔の朝鮮の人々の生活像などを垣間見ることのできるものだった。

梵鐘は京都の名匠・高橋才治郎の作だそう(▼)。

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鐘楼のそばの鉄骨には黄色いリボンがたくさん結びつけられていた。セウォル号沈没事故の犠牲者に対する哀悼の気持ちを書いたリボンだ。

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また境内には、日韓対訳の 「懺悔文」 が刻まれた石碑が建っていた。

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「われわれ曹洞宗は、明治以後、太平洋戦争終結までの間、東アジアを中心にしたアジア地域において、海外布教という美名のもと、時の政治権力のアジア支配の野望に荷担迎合し、アジア地域の人びとの人権を侵害してきた。また脱亜入欧のもと、アジアの人びととその文化を蔑視し、日本の国体と仏教への優越感から、日本の文化を強要し、民族の誇りと尊厳性を損なう行為を行ってきた。しかも仏教の教養にももとるようなこうした行為を、釈迦牟尼世尊と三国伝灯の歴代祖師の御名のもとに行ってきた。まことに恥ずべき行為というほかない。
 われわれは過去の海外伝道の歴史の上で犯してきた重大な過ちを率直に告白し、アジア世界の人びとに対し、心からなる謝罪を行い、懺悔をしたいと思う。」(以下、略)などと刻まれていた。

つづく


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