さがす

dilbelau2

2021年10月25日 09:13

BIFF4本目は片山慎三監督の 『さがす』。「映画の殿堂」 中劇場で。

「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。そう告げた翌朝、父は娘をひとり残し、姿を消した。孤独と不安を押し殺しながら、娘は父の行方をさがし始める。「唯一無二の衝撃を世界に放つ!」 というコピーにひかれてチケットを予約した。


姿を消した父親を佐藤二朗、娘を伊東蒼、父の失踪と関係のある人物・山内を清水尋也が演じる。確かに衝撃だった。佐藤二朗が 「素振り」 をしている序盤のシーンから、なんとなく予想はできたものの、そこから先にさらなる展開があり。

上映後はオンラインで片山監督と会場をつないで、通訳を介しての観客との対話の時間があった。会場から積極的に質問が上がっていた。



Q. どのようにストーリーを着想したか。
A. 自分の父親が昔、殺人で指名手配さていた犯人を電車の中で見かけた。その話を聞いた家族は半信半疑だったが、数年後に逮捕された犯人のそれまでの足取りを見ると、父親が見かけたのはやはり犯人だったということがわかった。その経験から話を膨らませていった。

Q. どのようにキャスティングしたか。
A. 佐藤二朗はコミカルなイメージがあるが、意外性が出せるかと思いキャスティングした。当初から彼を想定して脚本を書きオファーした。二重性、意外性が怖さをよりかきたてるのではないかと思った。(監督出身の)大阪には元気でたくましい 「おばちゃん」 のような中学生も多い。そういうイメージで娘役を設定した。

Q. 「当たり」 が出たアイスの棒が犯人から父親へ、父親から娘へと渡っていくのは面白い演出だと思った。
A. 犯人と父親、娘の3人が一つのフレームに同時に収まるシーンはなかったが、アイスの棒で3人がつながっている感じを表現した。

Q. 信号待ちのシーンで画面を横切っていく自転車の人が映り込んでいた。あれは意図したものか。
A. 意図したものではない。もともと人通りの多い場所なので、ある程度映り込むのはやむを得ないと思って撮影に望んだが、あの自転車の人はたまたまいい感じで映り込んだのでそのまま使った。

Q. 最後の卓球のラリーのシーンが印象的だった。最初からあのシーンを入れようと考えていたのか。
A. 最初から考えていた。言葉のやり取り以上の親子のやり取りを表したかった。

観たあとに監督から作品についていろいろ話が聴けるのは、やはり興味深い。なるほど確かに、いたって普通の、というよりかなり頼りない 「おっちゃん」 が一線を超え、どんどんエスカレートして悪魔になっていく様子はゾッとする。バレなければ地獄への道をさらに突き進んでいただろう。その過程で、佐藤二朗さんの顔つきが大きく変わっていくわけでもなく、見た目には特に変わりないのにやっていることが・・・という点は非常に恐ろしかった。その展開を見せる作品だろう。

ただ、いくつか設定にやや無理があると思ったのと、人を殺すシーンが多くて見るのがつらかった。自殺願望がある(と言っていた)人を次々に殺すという設定は座間連続殺人事件をモチーフにしていると思われるが、事件からそれほど経っていないこともあって、あまりに生々しく、いたたまれなくなった。

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