2017年06月19日
おじいさんの家には幽霊が住んでいる
素晴らしい絵本に出合った。絵本作家이영아(イ・ヨンア)さんの 『할아버지 집에는 귀신이 산다』。直訳すると 『おじいさんの家には幽霊が住んでいる』。坡州(パジュ)市の出版社 「꿈교출판사」(クムキョ出版社)から5月10日に出版された。
舞台は釜山市西区峨嵋洞(アミドン)碑石(ピソク)マウル。日本統治時代、日本人の共同墓地があった場所だ。1945年の終戦後、日本人が帰国して墓は取り残された。そこに朝鮮戦争(1950~53)の戦火を逃れ各地から釜山に避難してきた人々が定着し、マウル(村)が形成された。住む家も建材もなく、やむを得ず墓石や墓の囲い石などを活用して家を建てたという歴史がある。
登場人物は男性2人。韓国人と日本人だ。韓国人の男性は、15歳のときに朝鮮戦争が勃発し、北朝鮮の延白(ヨンベク)から1人で釜山に避難。墓の上に家を建てて暮らし始めたが、その後、南北が分断されたため故郷に戻れず、以来、家族と生き別れたまま碑石マウルで1人で暮らすハラボジ(おじいさん)。
もう1人は江戸時代、対馬から釜山に出稼ぎに来た日本人・藤左衛門の 「幽霊」。釜山では、対馬藩から外交や交易のため派遣された日本人の居住地 「草梁(チョリャン)倭館」 で豆腐屋を営んでいたが、病を患う。家族が待つ日本に帰りたいという願いは叶わず、そのまま釜山で亡くなった。
釜山に避難したハラボジが家を建てたのは、この藤左衛門の墓の上だった。墓で眠っていた藤左衛門は、ハラボジが家を建てる騒音に目を覚まし、幽霊となって一緒に “暮らして” いた、という設定。
ある日、藤左衛門(幽霊)は、日本人が先祖の墓石を訪ねて釜山を訪ねたという新聞記事を目にする。自分の墓の存在を子孫に伝えることができれば、自分の遺骨も日本に持って帰ってもらえるかもしれないと思った藤左衛門は、おじいさんに自分の墓石を探してくれと頼みこむ。
あまりの熱意に押されて一緒に墓石を探すが、なかなか見つからない。そのうち身の上話を始めた2人は、ともに故郷に帰れず、家族と離れて異郷で暮らしているという共通点があることを知り、心を通わせるようになる。
「明日はもっとしっかり探してみよう」 という場面で絵本は終わる。果たして墓石は見つかったのか、その先の物語は裏表紙に描かれている。
作者のイ・ヨンアさんは、釜山・慶尚南道の絵本作家を目指す若者11人の集まり 「創作共同体A」 に所属している。11人はそれぞれ釜山をテーマにした絵本を作っていて、年内に順次出版されることになっている。イ・ヨンアさんはそのトップバッター。
「韓国の子どもたちは教育によって韓日の歴史について固定観念を持っているが、それとはまた違う視点でも両国のことを見て欲しい」 という思いもあり、絵本を作ったという。草梁倭館に関する史料を集め、時代考証をした上で人物や背景を設定するなど、綿密な事前準備をされたそうだ。
碑石マウルにも何度も足を運んで住民に話を聞かれたそう。その聞き取り調査の中で、「当時の状況ではやむを得なかったとはいえ、誰かのお墓の上に家を建てることは心苦しかった」 と、今も供養を続ける住民がいることを知ったとのこと。そうした住民の温かい気持ちも伝えたかったとイ・ヨンアさんは話していた。
子ども向けではあるが、大人が読んでも充分楽しめる。ユーモラスな幽霊とハラボジの心温まる交流は、何とも言えない余韻を心に残す。ほっと癒される感じがして、手元に置いて何度も読み返している。
韓国語版は東京・神保町のブックカフェ 「チェッコリ」 の店頭やオンライン書店で購入できる。日本語翻訳版も是非、出版されたらいいなと。
舞台は釜山市西区峨嵋洞(アミドン)碑石(ピソク)マウル。日本統治時代、日本人の共同墓地があった場所だ。1945年の終戦後、日本人が帰国して墓は取り残された。そこに朝鮮戦争(1950~53)の戦火を逃れ各地から釜山に避難してきた人々が定着し、マウル(村)が形成された。住む家も建材もなく、やむを得ず墓石や墓の囲い石などを活用して家を建てたという歴史がある。
登場人物は男性2人。韓国人と日本人だ。韓国人の男性は、15歳のときに朝鮮戦争が勃発し、北朝鮮の延白(ヨンベク)から1人で釜山に避難。墓の上に家を建てて暮らし始めたが、その後、南北が分断されたため故郷に戻れず、以来、家族と生き別れたまま碑石マウルで1人で暮らすハラボジ(おじいさん)。
もう1人は江戸時代、対馬から釜山に出稼ぎに来た日本人・藤左衛門の 「幽霊」。釜山では、対馬藩から外交や交易のため派遣された日本人の居住地 「草梁(チョリャン)倭館」 で豆腐屋を営んでいたが、病を患う。家族が待つ日本に帰りたいという願いは叶わず、そのまま釜山で亡くなった。
釜山に避難したハラボジが家を建てたのは、この藤左衛門の墓の上だった。墓で眠っていた藤左衛門は、ハラボジが家を建てる騒音に目を覚まし、幽霊となって一緒に “暮らして” いた、という設定。
ある日、藤左衛門(幽霊)は、日本人が先祖の墓石を訪ねて釜山を訪ねたという新聞記事を目にする。自分の墓の存在を子孫に伝えることができれば、自分の遺骨も日本に持って帰ってもらえるかもしれないと思った藤左衛門は、おじいさんに自分の墓石を探してくれと頼みこむ。
あまりの熱意に押されて一緒に墓石を探すが、なかなか見つからない。そのうち身の上話を始めた2人は、ともに故郷に帰れず、家族と離れて異郷で暮らしているという共通点があることを知り、心を通わせるようになる。
「明日はもっとしっかり探してみよう」 という場面で絵本は終わる。果たして墓石は見つかったのか、その先の物語は裏表紙に描かれている。
作者のイ・ヨンアさんは、釜山・慶尚南道の絵本作家を目指す若者11人の集まり 「創作共同体A」 に所属している。11人はそれぞれ釜山をテーマにした絵本を作っていて、年内に順次出版されることになっている。イ・ヨンアさんはそのトップバッター。
「韓国の子どもたちは教育によって韓日の歴史について固定観念を持っているが、それとはまた違う視点でも両国のことを見て欲しい」 という思いもあり、絵本を作ったという。草梁倭館に関する史料を集め、時代考証をした上で人物や背景を設定するなど、綿密な事前準備をされたそうだ。
碑石マウルにも何度も足を運んで住民に話を聞かれたそう。その聞き取り調査の中で、「当時の状況ではやむを得なかったとはいえ、誰かのお墓の上に家を建てることは心苦しかった」 と、今も供養を続ける住民がいることを知ったとのこと。そうした住民の温かい気持ちも伝えたかったとイ・ヨンアさんは話していた。
子ども向けではあるが、大人が読んでも充分楽しめる。ユーモラスな幽霊とハラボジの心温まる交流は、何とも言えない余韻を心に残す。ほっと癒される感じがして、手元に置いて何度も読み返している。
韓国語版は東京・神保町のブックカフェ 「チェッコリ」 の店頭やオンライン書店で購入できる。日本語翻訳版も是非、出版されたらいいなと。